この(3)でも「その(2)」に引き続き、ちいさなTipsを備忘的に記します。
Adjustmentsを使おう
銀行からの口座残高のお知らせと自分のLedgerとの間で、残高が不一致となることは珍しくはありません。そんな時に、帳合を取るために使うのが Adjustments (調整)というトランザクションというか裏ワザ。
たとえば、銀行からの残高をチェックすると35,000円だったけど、ledgerでbalしたら、Bank bal = 45,000になっていた:
$ led b bank
45,000 JPY Assets:Bank
こうした場合、銀行の残高が間違っている可能性はゼロなので、ledgerのトランザクションのどこかに、10,000円分の
- 数値のタイプミス
- トランザクションの転記もれ
があるわけです。大量のトランザクションを見てそれを発見するのはとても大変です。そこで、とりあえず Equity:Adjustments というアカウントに収めることで、バランスを取ります:
05/17 * Adjustments
Assets:bankA = 35,000 JPY
Equity:Adjustments
ポイントは金額の前に =
を書くことだけ。こうすると、BankAの残高はいわば強制的に35,000円となります:
$ led b Adjustments
10,00 JPY Equity:Adjustments
これで、当面は元帳内部はすっきりピッタリ帳合がとれます。その後、
- じっくりと時間をかけてjournalを見直しエラーを見つけて、
- $ led b Adjustmentsした時に 0 JPY になることを目指す
ということになります。
なお、 Equity:Adjustments を使えば、銀行口座の調整だけでなく、クレジットカードやnanacoやsuicaなどのカードの残高の帳合を簡単に合わせることができます。けれども家計簿では、銀行口座やクレジットカードはともかくとして、nanacoやsuicaの残高までピッタリ合わせる必要はありません。そのやり方はこちらを見て下さい。
少額の現金の扱い
まずはnanacoにお金をチャージします:
2019/05/27 * nanacoチャージ
Assets:nanacoCard
Assets:Cash -2,000 JPY
そしてお昼ごはん:
2019/05/27 * セブンイレブン
Expenses:Lunch 698 JPY
Assets:nanacoCard
チャージ時点でnanaco残高がゼロだったら、残高は1,302円になるはずですが、そんなことはめったにありません。今回は、1,469円になっていました。そこで、上に書いた「調整」をしておきます:
2019/05/27 * 調整 nanaco
Assets:nanacoCard = 1,469 JPY
Equity:Adjustments
つぎの問題は、nanacoなどでの少額の支出をどう扱うかです。家計簿では、カードにチャージしたところまでを転記して、あとは知らんぷりするのが良策かと・・・。カードで何を買ったかまでは管理しないという感じですね。ただし、家計全般を考えて、どうしても記録していた方がよい物を購入した時、たとえば、お酒への出費をコントローする必要性がある場合(おぅ、これは良い例だ!)には:
2019/05/29 セブンイレブン
Expenses:Drinks 2,500 JPY
Assets:nanacoCard
などと書いておくって感じでしょうか。
利子・利息の転記方法
マイナス金利は国による民衆資産の窃盗(強盗?)という説があるそうですが、それにしても銀行にお金を預けているとスズメの涙レベルの利息がつきます。それを転記する方法:
2019/06/05 銀行口座への利息
Assets:横浜銀行
Income:利息 -34 JPY
他に例を見たことが無いので、Incomeにして良いのかどうか分かりませんが、結果的にはこれで辻褄は合います:
$ led b
100,034 JPY Assets:横浜銀行
-100,000 JPY Equity:Opening Balances
-34 JPY Income:利息
--------------------
0
定期的なトランザクションの書き方
家計簿(会社の元帳でも?)同じようなトランザクションが繰り返し転記されます。毎月1回の支払いは、それだけを集めたテンプレートファイルを用意して、月初めにそれをLedgerファイルに読み込み、金額と日にちだけを修正追加できるようにしておくと良いそうです。これはなるほど!のアイデアですね。
しかし、2ヶ月に1回とか、年に1回とかのトランザクションはテンプレートにするほうが面倒です。そこで、用意されているのが periodical transaction です。具体的には、Ledgerファイルの先頭に、定期的トランザクションの定義を転記します。
次の例を見て下さい。これは 偶数月 に支給される年金(国民年金;NP)と(国家公務員年金;KKR)を定期的なトランザクションとして定義したものです(金額は仮想です):
~ bimonthly from 2019/04/15
Assets:みずほ銀行
Income:年金:KKR 40,000 JPY
Income:年金:NP 30,000 JPY
次の例は、2ヶ月に1回、 奇数月 に引き落とされる管理費と上下水道代です:
~ bimonthly from 2019/03/21
Expenses:管理費 40,000 JPY
Expenses:公共:上下水道 3,500 JPY
Assets:みずほ銀行
そして、3番目は年に1回の諸会費の例です:
~ yearly from 2019/03/01
Expenses:諸会費:JAF 4,000 JPY
Expenses:諸会費:JPS 8,000 JPY
Liabilities:Visa
レポートの表示
これらをLedgerファイルの先頭に書いておいて、次のようなコマンドを入力します。
- IncomeとExpensesについて定期的(予算)のバランスをレポート:
$ led budget ^income ^expenses
- 上のようにbudgetを定義していても、単にbal/regでのレポートには反映されません。bal/regでbudget(定期・予算)定義を反映させるには次のようにします:
$ led bal --add-budget
- より詳細なregレポートを表示するには:
$ led reg --add-budget
上のコマンドの結果の抜粋を示します:
:
2019/04/01 Budget transaction Assets:みずほ銀行 70,000 JPY 70,000 JPY
2019/04/01 Budget transaction Income:年金:KKR -40,000 JPY 30,000 JPY
2019/04/01 Budget transaction Income:年金:NP -30,000 JPY 0
2019/05/01 Budget transaction Expenses:管理費 -40,000 JPY -40,000 JPY
2019/05/01 Budget transaction Expenses:公共:上下水道 -3,500 JPY -43,500 JPY
2019/05/01 Budget transaction Assets:みずほ銀行 43,500 JPY 0
2019/04/01 Budget transaction Expenses:諸会費:JAF -4,000 JPY -4,000 JPY
2019/04/01 Budget transaction Expenses:諸会費:JPS -8,000 JPY -12,000 JPY
2019/04/01 Budget transaction Liabilities:Visa 12,000 JPY 0
2019/06/01 Budget transaction Assets:みずほ銀行 70,000 JPY 70,000 JPY
2019/06/01 Budget transaction Income:年金:KKR -40,000 JPY 30,000 JPY
2019/06/01 Budget transaction Income:年金:NP -30,000 JPY 0
こんな感じです。定期的(予算)をこのように転記すると、日々の転記の工数が大幅に軽減されます。
几帳面?
これまで、子どもの頃のお小遣い帳、研究費の精算表などいろいろな帳簿をつけてきましたが、帳簿つけで一番大事なのは「継続性」と「即時性」。継続性は連続して長い年月、記録し続けるということ、「即時性」はお金が動いたとき(正確には「トランザクションが発生したとき」)、後回しにしないで、すぐに記帳することです。いずれも言うは易く行うは難しです。実際これまで、何度も痛い目に合いました。自分の性格がだらしなくて几帳面じゃあないからだと思っていました。
それで、「几帳面」と言うのは「帳面」をきちんとつけられることだと思っていましたが、どうやらそれは間違いで、「几帳」という「寝殿造りの間仕切り」の仕上げがとても丁寧だったことに由来するそうです。
それはさておき、Ledgerではプレーンテキストで複式簿記の原データが簡単に入力できます。このことによってボクは生まれて初めてストレスなく帳簿のデータ入力ができるようになりました。自分の性格に問題があって、そもそも帳簿や帳面をつけることに適性がなかったのではなくて、ボクの性分にあった入力方法と出会わなかったからだ、と今は思っています。
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