プレーンテキストファイルで「複式」家計簿(8)

高速道路料金、高い!

日本の高速道路料金は 不当に高い ですよね。誰もがそう感じていると思います。

一体どうなっているのか、 国際比較 のデータを見たいと思って報告書や資料、ネットを探しても、なかなかこれというものが見つかりませんでした。つい最近、偶然、こちらにとてもコンパクトにまとまったデータを見つけました。元は英語だったので日本語にさせてもらいました。なお、「円」換算はその日のレートによって異なります。およその目安としてごらんください。

図1: 高速道路料金国際比較(https://livejapan.com/en/article-a0002292/ より)

図1: 高速道路料金国際比較(https://livejapan.com/en/article-a0002292/ より)

これを見ると各国の高速道路課金システムの主なものは 無料 の他、

  • 走行距離 に応じて課金
  • それプラス基本料金というか 1回利用 あたりの料金を課金
  • 年間使用料金 を払うという形

などがあるようです。上の表で /use とあるのは、1回利用あたりの基本料金です。 /年 は文字通りの年間利用料金です。

その他、時間帯や時期によって料金を変えたり無料にしたりとか、特定の車種(トラックのみ)に限定して課金するとか、特定の地域だけ有料だったりとかの小さなバリエーションがあります。日本のETCマイレージサービスが提供する平日朝夕割引とかもその一例でしょう。

しかしどう見ても、わが国の高速料金は 地球上 でダントツの トップ 。言い換えれば 太陽系 で最も料金が高い(笑)。お願いだからもう少し安くしてくれないかしら・・・。けれども大きな流れとしては、安くするどころかむしろ機会があれば値上げしたいという雰囲気のようですね。さすが 東洋のガラパゴス の面目躍如というところです。

いろいろ言いたいことはありますが、それは別の機会、別の場所でということにして、ここでは一市民のささやかなる節約のための工夫を紹介します。

つまり:

たいていの人は高速道路料金を ETC で支払います。そうすると何となく ポイント が溜まっていきます。そのポイントをうまく管理し活用するための プレインテキスト によるアカウンティングのやり方

を紹介します。なお、プレインテキスト・アカウンティングは「業界」では PTA (Plain Text Accounting)と略すならわしのようです(笑)。

なので、ここのテーマは短く言えば「 PTAでETCポイント管理 」になります。

ETCマイレージポイントをなんとかしよう!

マイレージなどの「ポイント」をどう仕訳・記帳するのかについておさらいをすると、日本でも欧米でも「ポイント」取得時には何も記帳する必要はない、実際に使った時のみにそれを記録すれば良いようです。

転記の際には、「 雑収入 」にするとか「 値引き 」にするのが一般的のようです。会社の経理でも特に決まったやり方があるわけではないとのこと。

個人的な家計簿レベルで一番 簡便 な方法は、ポイントを使った時には、アカウントとしてはポイントをぜんぜん表に出さずに 値引き として扱うことです。たとえば5,600円の電気製品を買いました、1,200円をポイントから支出しました、その時には:

2019/09/01 ヨドバシカメラ
   Expenses:家電:ガジェット     ( 5,600 JPY - 1,200 JPY)
   Liabilites:Visa

こうすると、実際に支出した 金額 が帳簿上で追跡できるので、多くの場合にはこれで用が足ります。

高速道路を使ったときの ETCマイレージポイント についても事情はほぼ同じです。いま仮にマイレージポイントを1,000円分だけ使った場合には、次のような転記になります:

2019/09/01  練馬〜高崎
   Expenses:車両費:高速代    ( 2,170 JPY - 1,000 JPY)
   Liabilites:Visa

これはこれで、OKなのですが、しかし・・・

もうすこしきちんとETCポイントの残高などを把握・管理したい場合には、ETCマイレージ特有の特殊性もあって、結構めんどうです。

ネット上(総務の森)にもこんなやり取りがありました:

<Q1> ETCの利用が多いので、月末に一か月分を未払金であげて、
クレジット引落し日に現金支払いで計上しています。
マイレージ還元があった場合の仕訳を教えて下さい。

<A1> こんばんわ。
特に仕訳の必要はないと思います。
利用料の値引のようなものですから料金自体発生しませので
仕訳のしようがないと思います。
ポイント還元値引も今のところ同様に特に経理処理は不要のようです。

<Q2> ご回答ありがとうございます。
経理処理は不要とのことですが、
実際に走ったETC料金を未払金で計上しているので還元分が
未払金として残ってしまうのですが・・・

<A2> こんばんわ。
逆仕訳で還元分戻しは無理でしょうか。
であれば雑収入で収入処理するよりないと思います。

要するに「値引き」か「雑収入」かのどちらからで処理、という話になっていますが、プロフェッショナルな経理担当の方は何となくすっきりしない心持ちになると思います。

ETCマイレージポイントの残高などを記録・管理する試み

ETCマイレージポイントは一般のポイントと次のような点で異なります:

  1. ETCでは、特定の使用日や使用経路に対して、ユーザが自由にポイントを使うことができません。たまったポイントを「ETCサービス」(会社なの?公益法人なの?行政組織なの?)があるルール(FCFS)に従って振り分けて消化してくれます。

  2. またマイレージポイントの蓄積と消化はリアルタイムに把握することができません。毎月20日に「ETCサービス」のホームページなどを見て 自分 で確認することが必要です。

  3. 何よりもポイントのたまり方や消化の仕方などが 超複雑 。しかも高速道路各社でも微妙にちがう。自前でこのプロセスをプログラム化するのは大変でしょう。情報系の学部生の課題としては面白いかもしれませんが(笑)

しかしきちんと管理するとそれなりに 大きな金額 の戻りが期待できます。がんばってトライする価値はあります。

まず準備段階として次の2つのサービスにユーザ登録します:

  • 「ETC利用照会サービス」
  • 「ETCマイレージサービス」

これについては良い情報がたくさんネット上にあります。そちらを見てください。上のサービスに登録しても、実際の経理的な処理には 手作業 が必要です。次に例をあげます。

PTAによる処理の一例

ここに至るまで、さまざまなやり方を試しました。いずれも「あちらを立てればこちらが立たず」で欲しい情報をきんと管理できている気分がしませんでしたが、現在は次の例のようにLedgerの 仮想アカウント (virtual accounts)で処理しています。これで、とりあえずほぼ満足の行く形になったと思います。

2019/08/10  青葉〜町田
    Expenses:車両費:高速代                  370 JPY
    Liabilities:Visa

2019/08/11   新保土ヶ谷〜大師
    Expenses:車両費:高速代          (320 JPY + 690 JPY)
    ; 首都高 690円
    Liabilities:Visa

2019/08/12  練馬〜anywhere
    Expenses:車両費:高速代                   2,000 JPY
    Liabilities:Visa

2019/08/20 * ETCマイレージサービス
    ; ポイント還元
    [Assets:Mileage:ETC]                    2,000 JPY
    [Income:還元Point]

2019/08/21 (08/10)  青葉〜町田 マイレージ使用
   ; 全額マイレージでカバー
    Liabilities:Visa                    370 JPY
    Expenses:車両費:高速代              -370 JPY
    (Assets:Mileage:ETC)               -370 JPY

2019/08/21 (08/11)  新保土ヶ谷〜大師 マイレージ使用
    ; 首都高以外をマイレージでカバー
    Liabilities:Visa              320 JPY
    Expenses:車両費:高速代         -320 JPY
    (Assets:Mileage:ETC)          -320 JPY

2019/08/21 (08/12)  練馬〜anywhere マイレージ使用
    Liabilities:Visa              630 JPY
    Expenses:車両費:高速代         -630 JPY
    (Assets:Mileage:ETC)    -630 JPY

このような元帳に対して、まず仮想アカウントを 除外 して計算するために、 --real オプションをつけてbalレポートすると:

$ led bal --real
	    2,060 JPY  Expenses:車両費:高速代
	   -2,060 JPY  Liabilities:Visa
--------------------
		   0

当月の高速代として2,060円が計上されています。当然バランスはゼロになっています。

次に、仮想アカウント( Income:還元PointExpenses:Mileage:ETC )を含めて計算したレポートを見ましょう。 --real オプションを外すだけです:

$ led bal
	      680 JPY  Assets:Mileage:ETC
	    2,060 JPY  Expenses:車両費:高速代
	   -2,000 JPY  Income:還元Point
	   -2,060 JPY  Liabilities:Visa
--------------------
	   -1,320 JPY

1行目 に注目して下さい。仮想アカウント Assests:Mileage:ETC の残高が680円であることが示されています。次に 3行目 では、仮想アカウト Income:還元Point が-2,000円であることが示されています。

このように仮想アカウントを使うことで、マイレージポイントのたまり具合や還元・充当の記録をきちんと残すことができます。

ただ、このままだとポイント還元がどの高速利用に適用されたのか、わかりづらいという難点があります。

それを迂回する一つの方法として、Ledgerの トランザクションコード を使ってみました。

トランザクションコードを使う方法

上の記帳例では、マイレージポイントが適用されたトランザクション(下から3つ)では、日付の後ろに (08/10) などのオプショナルな コード が追加されています。これはマイレージを適用して割引き対象となった元の道路利用日を記録しています。このコードをつけることで、どの高速利用がどのような金額で割り引かれたかをすぐに知ることができます。 --format オプションを使って、次のようにコマンド入力します:

$ led --format "%(date) %(account) %(code)\n" reg expenses

その結果は次のようになります:

2019/08/10 Expenses:車両費:高速代  370 JPY
2019/08/11 Expenses:車両費:高速代  1,010 JPY
2019/08/12 Expenses:車両費:高速代  2,000 JPY
2019/08/21 Expenses:車両費:高速代 08/10 -370 JPY
2019/08/21 Expenses:車両費:高速代 08/11 -320 JPY
2019/08/21 Expenses:車両費:高速代 08/12 -630 JPY

これで、もともとの(値引き前の)トランザクションと、マイレージポイントで値引きされたトランザクションとの対応がひと目で分かります。もちろんコードのつけ方は自由です。1日に何回も同じ経路で高速道路利用する場合には、それがわかるような形でコードづけします。

ということで

この方法によれば、高速代の月ごとの支出など現実に支出された金額と同時に、マイレージポイントの残高をきちんと把握できます。これだけの記録と情報があれば、個人の経理(会社も?)としては不満はありません。またLedgerによるPTAでは、帳面をめくったり大きな会計ソフトを立ち上げたりしなくても、随時、知りたい情報をほぼ 瞬時 に入手できます。

なお仮想アカウントの名称を Mileage:ETC にしたのは、将来、 Mileage:ANA とかも管理対象にしたいという理由からです。

おわりに・・・

思いの外、長くなってしまったので本日はここまでにします。

Acknowledgement