自宅から数分も歩くと横浜市の「 市民の森 」(注1)に入れます。一歩踏み込むと宅地化された周辺とは別世界の森閑とした森が広がります。
先日お天気に誘われて森の遊歩道を歩いていると、道端に10m毎に数株、枯れ葉の中から図1のような花が周囲から浮き出た感じで風にそよいでいました。
みなさん、この花をごぞんじでしょうか?
花の名前にくわしい妻がそっと手を伸ばして「あらこれ何?かわいい」と言うものですから、帰宅後にGoogleで画像検索しようと、大急ぎでひざまずいて写真を撮ってきました。そのためツボミからピントを外しました。スミマセン 😅
Googleの画像検索も時々ヒットしないことがあります。今回もそのケース。けっこう時間をかけて図1の画像で画像検索しましたが見つかりません。
そもそもネット上の花の画像はほとんどが 満開 の画像です。この写真のようにツボミの画像は少数派です。
「黄色いすずらん」とか「葉に筋」などいろいろ試行錯誤し、あと少しのところまできてもこれっという花がヒットしません。最終的には画像検索ではなくて普通のGoogle検索で「ラン 黄色い花」で検索してようやく見つかりました。
和名:きんらん(ラン科 キンラン属)
英名:Golden orchid
学名:Cephalanthera
「 キンラン 」で間違いないと確信したあとで、改めてネットで見るとたしかにツボミの写真は少数です。その意味では希少で貴重な画像ですが、何しろピンぼけ😓
キンランについて
さてキンランですが、 1990年ころから急激に数を減らし1997年に環境庁絶滅危惧II類として掲載された(出典)そうです(注2)。キンランが「 シラカシ 」と 菌根 を介して不思議な共生関係を持っていることについて、明間(あけま)氏のホームページの 菌従属栄養植物 項にとても興味深い説明がありました。
KANSOテクノスの「絶滅が危惧される植物種の保全への取り組み」では、キンランの菌根菌の DNA解析 を実施し、 イボタケ科 、 ベニタケ科 に属することを確認したそうです。このことによって苗の定植を行う際に適地かどうかが判断できるとのこと。 DNA解析は植物を絶滅の縁から救出するための有効な手段になるんですね。おどろきました。またキンランの 無菌苗 を植栽して自生地に定植したところ「6年目でも地上部の発生が見られ開花も確認」されたとのことです。このこととDNA解析との関連はよくわかりませんが、しかしキンランを人工的に増やせるかもしれないという点では朗報ですね。他にも野生復元のための研究がたくさんなされています。がんばって頂きたいです。
最後に「みんなの花図鑑AI」によれば、キンランは 誕生花 が5月9日だということ。これはびっくり!妻の誕生日です。また 花言葉 は「眠れる才能」「華やかな美人」などだそうです。これを聞いてすっかり上機嫌になった妻でした 😄
おまけ
キンランの自生地には、横浜市の市民の森の他、川崎市の生田緑地や日本女子大の西生田キャンパス(辻, 2016)など懐かしい場所が上げられています。これまでいかに漫然と暮らしていたか、お恥ずかしい限りです。
Acknowledgement:
- 植物図鑑・Q&A EVERGREEN - キンラン
- みんなの花図鑑 - キンラン
- 菌従属栄養植物 (「明間民央のページ」)
- 絶滅が危惧される植物種の保全への取り組み (KANSOテクノス)
- 辻誠治 (2019). 西生田キャンパスの森の再生. 日本女子大学総合研究所紀要 , vol.17, 1-48.