みなさん、ごちそうさまでした・・・

2019年3月16日(土)の「送別会」でみなさまからプレゼントされた1979年のワイン(図1)を先日、抜栓し賞味させていただきました。SNSでは速報でお知らせいたしましたが、もうすこし詳しくご報告申し上げます。

図1:  Leoville du Marquis de Las Cases(1979)

図1: Leoville du Marquis de Las Cases(1979)

1979年はボクが専修大学に入職した年です。その年にフランス・ボルドーで瓶詰めされたワイン、まさか40年後に、極東の島国=日本でボクのような人間が、 40年の教師生活を振り返りつつ万感の思いを込めてコルクを抜くとは思いもよらなかったでしょう。

結論を先に申し上げます。じつは内心ハラハラしておりましたが、ワインはとてもすばらしい状態でした。みなさん、ほんとうにありがとうございました。ごちそうさまでした。

抜栓までの顛末(てんまつ)

どこで飲むか

送別会の翌日(17日;日曜日)にクルマで大学に出掛けてみなさま方から頂戴した心のこもった多数のプレゼントや花束などを自宅に持ち帰りました。「荷物積むならフォレスター」ですから、搬送そのものは「おちゃのこサイサイ」。個人的にプレゼントしていただいた他のワインたちと一緒に、とりあえずわが家のセラーに入れました。

ワインに付属していた注意書きに、「移動した後は少なくとも数週間は抜栓しないように」の趣旨の注意書きが記されていました。また家庭用のセラーでは長期の保存はしない方が良いとの示唆もありました。

なにしろお贈りいただいたみなさんの心のこもったインですから、さてさて一体どんなお料理と合わせるべきなのか、家内といっしょに思案しましたが、ぼくら素人にはまるで見当が付きません。そこで、二人で到達した結論は・・・きちんとしたフレンチレストランに一旦おあずけして、このワインに合う料理を作っていただこう、ということになりました。

どこのお店にお願いするか、いろいろと悩みましたが、結局、横浜馬車道のフレンチレストラン=Ripaille (リパイユ)さまにお願いしてみることにしました。Ripailleは、家内が普段からお世話になっているリヨン料理教室の先生がなさっているレストランです。ボク自身は行ったことはありませんが、家内は友達と連れ立って何回か食事をしています。オーナだけでなくソムリエの方とも顔見知りということなので、家内からオーナにワインの銘柄と年式をお伝えしてお伺いをいたしました。

誕生日をかねて

お引き受け頂けるとのお返事を頂いたのは5月中旬でした。そこで、ワインケースに入れたワインをボクのクルマにそおーっと積みこんで助手席に置き、ワインを揺らさないように、いつもになく優しい運転で、お店にお届けしました。それが5月20日、お店のご都合などとのすり合わせの結果、6月10日の夜にお伺いすることにしました。なおボクの誕生日は5月末ですが、6月10日を誕生会と抜栓会を兼ねたディナー会とすることにしました。

さて首を長くしてその日を待っておりました。目の前に美味しい食べ物がありながら「お預け」を命じられたイヌの気持ちです。

ビンテージワインのこわさ

その一方、ビンテージワインは栓を抜いてみるまでどんな状態かわかりません。ドキドキ楽しみで胸いっぱいという気持ちだけでなく、一抹の不安がありました。

回数は多くはありませんが、30年以上のワインを飲んだことがあるにはあります。その中の1回は、胸をドキドキさせながらグラスについでもらったら、その瞬間に「ぎゃあ!」。色も香りもアウトで全く飲めませんでした。また飲めるには飲めるけど色が茶色っぽくなって、香りも「うーむ」状態という経験もあります。そもそも、抜栓する際にコルクが抜けないというかボロボロとかもあるようです。

ついにその日が!

ついに6月10日その日が来ました。しかし前日から、天気は大荒れ模様という不吉な予報。実際、夕方からは雨、風ともにまるで嵐か台風かという感じになりました。馬車道の地下鉄駅出口から地上に出ると暴風雨。傘をちゃんとはさせないほど・・・。目の前を歩いている若い男性の傘が見事に「おちょこ」状態。道を歩く人もまばら、そんな中、風雨をかき分けて、お店までやっとの思いでたどり着きましたが、スボンのむこうずねから下はびしょびしょという状態でした。

お店に入るとソムリエの方がにこやかにドア口までお迎えに来ていだきました。あら? 何と言うことでしょう、店内にお客さまの姿がありません。「きょうはこんな天気のため、お客様は山上さまお二人だけです。」

呆然・陶然

さて、当日のメニューはこんな風でした。

図2:  6月10日のメニュー@リパイユ様

図2: 6月10日のメニュー@リパイユ様

まずはお料理に合わせてシャンパンと白ワインをお勧め頂き、メインの手前までで既にとても幸せな気分になっていたところ、「ぼちぼち抜栓いたしますが宜しいでしょうか」というソムリエのお声かけ。

それから、ソムリエが慎重に慎重にゆっくりと抜栓してくださったのですけれど、途中で、「あ、これはすごい、大丈夫ですよ、すばらしい!」の発声。そして、次の写真を見てください。

図3:  抜栓直後のコルク

図3: 抜栓直後のコルク

コルクの匂いを嗅ぐまでもなく、40年まえのコルクとは思えない良い状態です。ボクのグラスに少しだけ注いでいただいた、その色が綺麗なワイン色、鼻をグラスの近づける前から、豊かなボルドーの香り。一口、ワインを含んだとき・・・たぶん目は上方45度にうわずっていたと思います。それで、お店の壁にはすばらしい絵画がたくさんかかっていますが、それらのどれかを見ていたわけではなくて、視線が彷徨し呆然というか陶然として胸がつまる思いがしました。

図4:  Leoville du Marquis de Las Cases(1979)

図4: Leoville du Marquis de Las Cases(1979)

さて、このワインに合わせるお料理としてシェフがご用意くださったのは「フォア・グラを詰めた仔鳩のロティ」。要するにビーフは論外、マトンも強すぎ、チキンは軽すぎということで、仔鳩にフォアグラを合わせて用意してくださったというわけ。ワインとのマッチングは、言葉にできないもどかしさですが、お互いに喧嘩せず、自己主張せず、調和的に良さを高め合っている、そんなふうでした(すみませんw)。

あまりの興奮で、ボクも家内も写真を撮るのを忘れてしまいました・・・。半分以上食べて「あっ」と気づいて撮った写真はあるのですが、手づかみで食べ散らかしたものですから、シェフが芸術的にアレンジしてくださった姿がすっかり壊されていて、とてもお見せできるものではありません(ほんとうに申し訳ありません)。

何かの宴席で、ボクが酔っ払ってきたのを見計らって、「仔鳩の写真!」とおっしゃって頂ければ、個人的にこっそりお見せできるかと思います。

そしてBDケーキ

食後のデザートになったら、とつぜんお店のBGMがハッピーバースデーに変わりました。それまで、今日のディナーが抜栓会プラス誕生会であることをすっかり忘れていました。「えっ?何?誰か誕生日?」と口に出して聞いたほどです。

図5:  サプライズのデザート

図5: サプライズのデザート

ボクのファーストネームは先もってオーナが家内に尋ねて確認されていたとのこと、ほんとうにありがとうございました。

感謝のことば

送別会にご出席いただいたみなさん、ありがとうございました。3月16日(土)当日も、人生最高の一日となりましたが、おかげさまで71歳のBDも生涯忘れ得ない記念すべき日になりました。ありがとうございました。

Acknowledgement