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退職者代表スピーチ1 (定年退職者慰労会)

  • 日時: 2019年3月14日(木)17時〜19時
  • 場所: ホテル・グランドパレス@九段下

ごあいさつ

人間科学部の山上です。ご指名を頂きましたので、僭越ではありますが、定年退職の先生方、職員の皆様方を代表・・・というか代理として一言ご挨拶申し上げます。本日は、私ども退職する教員・職員のために、このような慰労会をお持ち頂き、ありがとうございます。こころから御礼申し上げます。

さて、この3月をもって定年退職する私たちは、勤務した年月、その仕事の内容などは様々ではありますが、専修大学に対する思い、その点では全員に共通するものがあります。それを一言で申し上げますと、「大変におせわになりました、ありがとうございました」という感謝の気持ちであります。

改めて御礼申し上げます。「ありがとうございました。」

人の年齢

さて、この度、私たちは定められた年齢になって、定年退職を迎えることになりました。それを機に、「年をとる」ということについて、いろいろ考えて見ましたが、実は「老人」という言葉の定義がなかなかむずかしい。

みなさんご存知の通り、「後期高齢者医療制度」によれば、 75歳以上が 「後期高齢者」で、65歳から74歳までは 「前期高齢者」ですよね。世間一般では、ほぼ65歳からを老人とすることが多いようです。ところがこの戦後以来続いていた老人定義に対して、 2017年、おおきなチャレンジがありました。日本老年医学会が「高齢者の定義と区分」に関する提言をしました(表 1 )

表 1: 老人医学会提言(2017)
年齢範囲 日本語 英語
65 〜 74 准高齢者 pre-old
75 〜 89 高齢者 old
90 〜 超高齢者 super-old

それによりますと、 65歳から74歳までは 准高齢者、 75歳から89歳までを高齢者、 90歳以上を超高齢者とする、という風です。この提言の基礎には、データ的に、75歳までは元気な人が多数派になっているという事実があります。それに基づいて、老人医学会は「人生100年時代」というキャッチフレーズを打ち出しています。

この老人医学会の提言に従うと、今日ここにいる退職者全員は「准高齢者」になります。いわば 「准教授」みたいなものですね。つまりちゃんとした教授に至る一歩手前の先生、ちゃんとした高齢者の一歩手前にあって、やや未熟で足りないところのある高齢者という意味です。そうしてみると、ぼくはまだまだ修行が足りん、もっと修行を積まねばならぬ、ということですね。これには深く納得させられます。

大学の年齢

さて話は変わりますが、「大学の年齢」ということを考えてみましょう。

ご案内のとおり、専修大学は間もなく創立150周年を迎えます。ところで、世界最古の大学はイタリアのボローニア大学で、創立は 1088年、年齢は本年もって931歳。 2番目の大学は、イギリスのオックスフォード大で、 1167年創立( = 852歳)、ケンブリッジ大は 1209年(= 810歳)。あの歴史の浅い国=アメリカのハーバード大は1636年(= 383歳)です。

大学の場合には、創立後の年数を10で割れば、だいたい人の年齢になぞらえることができます。つまり、ボローニア大学(93歳)、ケンブリジ大学(85歳)、これは、老人医学会的に言えば、立派な「高齢者」ですね。ハーバード大は30歳台後半のまあ「壮年」ということになります。これで行くと専修大学は15歳です。つまりボクらの大学はせいぜい思春期前期の若者です。これからいっぱい新しことにチャレンジし、たくさんの経験と知識と積み上げ、色々な意味で、ますます大きく変化し、発達し発展していかなければならない年齢です。

創立150週年は、多くの方が通過点の一つであるとちゃんと認識されていますし、コマーシャルとかスローガンとしてなら良いのですが、本音で私たちが長い伝統・歴史を持つという風に信じ込み、グローバルに発信するのはまだ早すぎると思います。いやいや、日本国内では、他の大学よりは古いという見方もあるでしょう。けれど、それは野生のニホンヒキガエル2、平均寿命が5年ほどしかないのですが、井戸の中で集まって、年齢を自慢しあって、おれは5歳、偉いだろうと言っている風情ですよね。ヨーロッパヒキガエルは30年以上、生きるらしいです。

結び

専修大学が真の高等教育機関(=大学)として本領を発揮し、その社会的価値が世界から認められるかどうか、つまりグローバルに大学として認められるかどうか、ボクは、むしろこれからにかかっていると思います。早々と老成した気分にならず、思春期的で、中高生的なチャレンジ精神で、どんどんと新しいことに立ち向かっていくべきはないでしょうか。

まもなく「青年期」を迎える「若い専修大学」の、この先の100年、200年、いや1,000年を超える真の発展をお祈りしております。

ありがとうございました。

Footnote


  1. このドキュメントは、スピーチのために用意した原稿です。実際のスピーチでは一部割愛されたり字句が追加されたりしています。 ↩︎

  2. ニホンヒキガエル (出典:南部町の生きもの図典

    図1: ニホンヒキガエル

    図1: ニホンヒキガエル

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